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2007-03-14(Wed)

別れ

その時私は昼寝をしていた。
3月13日13:53。
67歳でその人は逝ってしまった。
その数分後に亡くなったことをメールで知らせてくれた人がいて、
その時家には福島から来た友人がいたのだけれど、
その人たちを置いて私は病院へ向かった。

すでに処置は済んでおり、遺体は霊安室に安置されていた。
死に目にはあえなかったけど、どうしても見送りをしたかった。

穏やかな顔で、その人は眠っていた。
まだ温かい額に手を当てて、髪をなで私は御礼を言った。
「○○さん、ありがとうね・・」
この人がいてくれたことで、私は看護師人生の最後を充実したものにできたと思ったから。
だから御礼を言いたかったのだ。


患者との別れがすんだ私に妻は言った。
「お父さんからあなたのこと、頼まれてるからね」と。
始めは意味が分からなかったのだが、
どうやら、開業する私に何かしてやれということらしかった。
嫁も言った。
「それが心残りだったみたいよ」と。


実は、再入院してきた日に少し時間があって話したことがあった。

患者「店やるって言ってたけど、何をやりたいの?」
私「前に話したの覚えてたの?」
患者「覚えてるさ」

私が退職後、商売をしたいと話していたことを覚えていて
患者はその話を聞きたかったようだ。
私は痛みのある足をさすりながら、
これから始めようとしていることや、それに伴う不安だったり、
色んな話をした。造船業を自営でやってきたその人は
「俺もやってきたことだから大変さはわかるよ」と言って
私を励ましてくれた。親戚でも娘でもない私のことを気遣ってくれた。
だから私もそれに応えたかったのだ。

そして患者は言った。
「緩和ってこんなもんなんかな〜?」と・・・
その時はまだ、我慢できる痛みだったのだけど、
私にはその言葉の奥に隠された不安を読み取ってあげることができなかった。

セデーションが始まってから妻に聞いた話では、
再入院する前の自宅で、患者は寝るときも明かりをつけていたというのだ。手をつないで寝れば恐くないでしょ?という妻に
「だめだ!つけたまんま寝るんだ!消しちゃダメだ!」
と言ったのだそうだ。

死を前にして、すごく不安だったんだろうなと思う。
せん妄状態だった時に「起きる起きる起きる!」と
寝たり起きたりを何度も繰り返していたのも、
このまま寝てしまったら死んでしまうかもしれないと不安だったのだろう、きっと。


葬儀屋の迎えを待ち、受け持ちのスタッフと見送りか・・・
そう思いながら霊安室の前で待っていると
ぞろぞろと7人のスタッフがやってきた。

私も何十人と患者を見送ってきたが、こんなに沢山のスタッフに見送られて家に帰った人がいただろうか?
私は家族でもなんでもないけれど、皆のその気持ちがとても嬉しかった。痛みを訴える患者を前に色々な思いが皆の中にもあったんだろうなと思った。私はいい仲間達に囲まれて助けられて働いてこれたのだなと
感謝の気持ちでいっぱいだった。

もう思い残すことはない。

残りの勤務を後悔することがないよう精一杯やるだけだ。

今はこの世を卒業し、不安も痛みもない世界にいるその人は、
きっと高いところから私のこれからを見守って、
そして応援してくれることと思う。

この出逢いに私は心からありがとうと言いたい。





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プロフィール
かに座・戌年・A型。看護師・英国IFA認定アロマセラピスト

Author:あろまなーす

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